初めて『ペン卒』をした
『ペン卒』
K-POPオタクをしていれば、きっと何処かで出会う単語であろう。
メンバー、グループ、オタクそのもの…範囲はそれぞれだろうが、それまで熱中してた対象を追うのを辞めると言うのがおおよその意味だろう。
私もK-POPアーティストを好きになって、かれこれ十余年。色んなグループを渡り歩いてきた。
他者から見たらこれも『ペン卒』の繰り返しなのかもしれない。ただし当の本人は『ペン卒』という枠組みでは考えていなかったのである。
私個人の中で『ペン卒』というのは、もっと急激に、思い立ったように、熱が冷め、ぱったりと追わなくなるものという捉え方(定義)をしている。
今までの私はいつのまにか流動的に、推しやグループから巣立って行っていったので、その定義には当てはまらない。つまりペン卒したことはないと考えていた。
そんな私がこの度『ペン卒』をする。
名前は伏せるが、元推しは出会った瞬間から一目惚れで、かれこれ6年半以上の月日を捧げてきた。
誤解がないように明言しておくが、彼自身に何か失態やスキャンダルがあった訳では全くない。完全な私自身の心変わりなのだ。
私はこの6年半という決して短くない時間で、1日たりとも彼のことを考えなかった日はなかったし、本気で彼が世界で一番かっこいいと思っていたし、彼を推すのをやめるのは自分が死ぬ日かオタクを辞める日だと思っていた。彼こそが人生最後の推しだと信じていた。
それでも『ペン卒』をする。何故か。
理由はオタ卒でも、結婚出産などのライブイベントでもない。
最も簡単な理由。
彼より好きな推しが出来てしまったから。
正確に言えば、その新たな本命推しも突如現れた訳ではなく、4年半以上掛け持ちして推してはいた。この間、私の中での彼の優先順位は2番手だった。どちらかと言えば彼個人よりも、彼の属するグループが好きで、強いて言えば推しは彼かな…?程度だったし、彼がどんな性格でどんな子なのか知りたいとまでは思っていなかった。
逆に、元推しはその人個人が大好きで、彼の為人、咄嗟に繰り出される言葉、エピソード、態度、全てにおいて好感と安心感を持っていた。
この6年半と言う長い年月の中で、一度も彼に対して不信感も違和感も持ったことがない程、彼は人前に立つ人として完璧だった。
どうしてそんな完璧な推しから離れる決意をしたのだろう。私もいまだに不思議に思う。
お金と時間が無限であれば、ペン卒なんてしないで済んだのだろうか…?いや、違う。
自分でも驚くくらい熱が冷めてしまったのだ。
物理的近接性という言葉を大学生の時に習った。
単純に会う機会や距離が近いほど親しみや好意を持ちやすいというものだ。
だからこそ遠距離恋愛は難しいのだと。
今回の『ペン卒』の原因は大きく三つあると思っている。
そのうちの一つはこの物理的近接性だと考えている。コンサートが出来るようになって、海外の行き来が出来るようになって一年半近く経つだろうか。
元推しに会えたのは、ドームツアー4公演、事務所の合同ドームコンサート2公演(それも1年前の夏)
一方で現推しはアリーナ規模の単独コンサート8公演。
元推しに会っていない期間に現推しに7回会っている。
そりゃいくらなんでも熱量の分配は差が出てくるでしょう。
そして二つ目。事務所・グループの方向性。
これは個人に関係することではないな。
でも元推しのグループや事務所の迷走っぷりにほとほと疲れてしまった。
現推しの事務所は中小企業だが、方向性は明確だし、訳の分からないことで会社内が揉めたりしない()
元推しが現事務所を退社する日が来たら私は手を叩いて歓迎するだろう。
最後の理由。
私は現推しの命懸けの全力パフォーマンスに完全に惚れてしまった。普段はおっとりしていて、優しくて、まるでゴールデンレトリバーのような愛くるしい彼が、絶叫して、頭を振り乱して、限界まで踊る姿に胸を打たれてしまった。ずっとずっとこのステージを見ていたいと思うようになった。私の生きる理由になった。
元推しはSWAGな雰囲気のグループだから、全身全霊で踊ったり歌ったりって感じじゃないから単純比較はできないが、私は『今ここで全力を振り絞る』アイドルを追いかけたいと思った。
これが私の『ペン卒』の全てである。
世の中には色んなペン卒があると思う。
熱愛発覚、犯罪、匂わせ…
その全てに当てはまらず最後まで完璧でいてくれた元推しには感謝しているし、6年半という長い時間私の希望でいてくれてありがとう。
この選択が正しいのかは、私にも他人にもわからない。
でも、有限の金銭と時間を今の推しに費やしていく覚悟だ。